労働委員会が雇用主による一方的な職場変更を困難に:雇用主が取るべき5つのステップ
Insights
12.11.24
2024年12月、全国労働関係委員会(NLRB)は、トランプ政権時代の判定を覆し、労働組合のある職場で、雇用主が労働組合との協議なしに職場変更を行うことをより困難にする重要な決定を下しました。この決定は、Endurance Environmental Solutions, LLC事件に基づくもので、労働法の振り子が再び動いたことを示しています。この決定では、一方的な変更を容易にする雇用主寄りの基準が覆され、労働組合が交渉権を放棄したかどうかを判断するための厳格な要件が復活しました。
今後、NLRBは、雇用主が交渉なしに職場変更を行うためには、「明確かつ疑う余地のない」権利放棄の証拠が必要とされることを求めます。新たなトランプ政権が発足し、NLRBのメンバーが交代して労働環境が再び均衡を取り戻すようにするとみられますが、この事案が再び覆されるまで、この新たな基準に従う必要があります。
本稿では、この決定の詳細を検討し、この新しい状況に適応するための5つのステップを紹介します。
職場の監視カメラが重要な決定の引き金に
この紛争は、廃棄物管理会社であるEndurance Environmental Solutionsと、そのケンタッキー州に拠点を置く労働者を代表するチームスターズ傘下の労働組合との間で発生しました。Endurance社は、労働組合との事前協議なしに、自社のトラックに監視カメラを設置したとされています。同社は、この変更を一方的に行う権限が労働協約(CBA)によって認められていると主張しました。一方、労働組合は、この行為が団体交渉権を侵害するとして不当労働行為の申立てを行いました。
この事案の結果を決定づける重要な論点は、労働組合が労働協約において、そのような変更に関する交渉権を放棄していたかどうかという点でした。
- 2007年から始まる10年以上にわたり、NLRBはこの問題に対する判断基準として「明確かつ疑う余地のない放棄」基準を採用していました。この基準では、労働組合がその問題に関する交渉権を明確かつ具体的に放棄した場合にのみ、雇用主が一方的な変更を行うことが認められます。
- 2019年、NLRBは「契約適用」基準を採用しました。この基準では、労働協約の明確な文言に基づき、雇用主が特定の職場条件について一方的に変更を行えるかどうかが判断されました。この基準により、雇用主は職場に関する事項を含め業務運営を幅広く自由に行えるようになり、特定の項目について交渉を強いられることが少なくなりました。
NLRB、過去に回帰し労働組合寄りの基準を導入
12月10日の決定では、NLRBが従来の「明確かつ疑う余地のない放棄」基準に回帰し、雇用主が労働組合との交渉なしに職場変更を行うことをより困難にしました。この具体的なケースでは、NLRBは、雇用主が契約の管理権条項を根拠に労働組合との交渉を省略したことが正当化されないと判断しました。
NLRBの民主党多数派は、より厳しい基準を復活させた理由として以下の点を挙げました:
- 法定目標との整合性: NLRBは、「明確かつ疑う余地のない放棄」基準の方が、全国労働関係法(NLRA)の核心的な目的である、団体交渉を通じた産業平和の促進をよりよく支えると述べました。
- 判例との一貫性: NLRBの多数派によれば、この基準は70年以上にわたるNLRBの運用と一致しており、米国最高裁判所にも支持されているとされています。これにより、雇用主に対してより安定的かつ予測可能な枠組みを提供します。
- 連邦裁判所との調和: 連邦控訴裁判所の大半は「明確かつ疑う余地のない放棄」テストを適用しており、各司法管轄区域での一貫性が確保されています。
一方で、2019年の第一次トランプ政権下でのMV Transportation事件で採用された「契約適用」テストは、雇用主が広範な管理権条項を、一方的な変更を行う許可として解釈することを可能にし、労働組合の交渉力を弱めるものでした。
当時のNLRB議長は、この歴史的基準への回帰が、労働組合の明示的な同意の重要性を強調するものであると、決定に付随する声明の中で述べました。
「本日の決定は、雇用主が賃金や労働条件の変更について交渉する義務を負うことを明確に示しています。ただし、労働組合が雇用主の決定に対する交渉権を明示的に放棄した場合を除きます」と、当時NLRB議長であったローレン・マクフェラン氏は12月に述べました。「明確かつ疑う余地のない放棄基準への回帰は、同法の団体交渉促進政策により適合しています。」
雇用主への影響
この決定は、労働組合のある職場での変更に関する雇用主の対応方法に大きな影響を与えます。主なポイントは以下のとおりです:
- 労働協約(CBA)の狭義な解釈: 広範な表現の管理権条項では、特定の一方的な行動を正当化する十分な根拠とはならない可能性があります。
- 違反のリスク増大: 労働組合の明示的な放棄を確認せずに行動する場合、雇用主は不当労働行為の申し立てを受ける可能性が高まります。
- 団体交渉の強調: この決定により、労働組合は変更に異議を唱え、交渉を要求する能力が強化されます。
雇用主が取るべき5つのステップ
この新たな状況に適応するために、雇用主は以下の5つのステップを検討すべきです:
1. 労働協約(CBA)の徹底的な見直し
- 全ての労働協約を詳細に確認し、管理権条項における曖昧な表現を特定してください。
- 交渉の際に条項を明確化し、一方的な変更が認められる場合を具体的に規定してください。
2. 法律顧問への相談
- 労働組合に加入している従業員に影響を与える可能性のある職場変更を実施する前に、FPの労働法顧問に助言を求めてください。
- 明確かつ疑う余地のない放棄基準を遵守し、法的リスクを最小限に抑えるようにしてください。
3. 管理チームの訓練
- 管理職および人事担当者に、復活した基準とそれが意思決定に及ぼす影響について教育してください。
- 政策や業務の変更を導入する前に労働組合と協議するための明確な手順を策定してください。
4. 労働組合とのコミュニケーションを強化
- 労働組合の代表者と、職場の問題に共同で対処するためのオープンかつ建設的な対話を維持してください。
- 交渉における誠意を示すために、意思決定プロセスに積極的に労働組合を関与させてください。
5. 紛争に備える
- 労働組合との全てのやり取りを記録し、提案する変更についての明確な根拠を提示することで、将来的な問題に備えてください。
- 交渉が行き詰まった場合に備え、業務上のニーズを満たすための代替計画を策定してください。
結論
最新の判決に関する最新情報を受け取れるよう、ぜひ「フィッシャー・フィリップス インサイトシステム」にご登録ください。これらの動向が貴社や従業員にどのような影響を及ぼすかについて質問がある場合は、フィッシャー・フィリップスの弁護士、本稿の執筆者、または当事務所の労使関係実務グループのメンバーにご連絡ください。
Related People
-
- Stephen C. Mitchell
- Regional Managing Partner
- 電子メール
-
- Joshua D. Nadreau
- Regional Managing Partner and Vice Chair, Labor Relations Group
- 電子メール