業績改善計画の再評価:効果的な業績改善計画を作成するための6つのステップ
Insights
12.06.24
ウォール・ストリート・ジャーナルは最近、「最も嫌われている解雇方法がこれまで以上に普及している――それがPIPの時代だ」というタイトルのコラムを掲載しました。このコラムでは、業績改善計画(PIP)を利用することが、業績不振の従業員を解雇する上で最悪の方法であると主張しています。しかし、コラムの内容をすべて鵜呑みにしてはいけません。PIPは、依然として雇用主にとって非常に有用なツールです。適切に実施すれば、従業員に対し、業務のパフォーマンスが期待に達していない箇所を伝えるとともに、改善するための時間を与えることができます。また、雇用主にとっては貴重な記録を作成する手段ともなります。
本稿では、PIPの利点を再検討するとともに、PIPを最大限に活用するための6つのステップを紹介します。
PIPは他の方法よりも優れており、価値あるツールであり続ける
ウォール・ストリート・ジャーナルのコラムでは、PIPにはほとんど価値がないと述べられていますが、事前の警告もなく突然、業績不振の従業員を解雇することよりも、PIPを発行する方が悪いと考えるのは難しいでしょう。しかし、PIPが従業員及び雇用主の双方にとって価値を提供するためには、慎重に作成されなければなりません。PIPは、公平であり、問題点を具体的に特定し、従業員が改善するための合理的な機会を提供するものでなければなりません。
ウォール・ストリート・ジャーナルのコラムでは、PIPを受けた従業員の大半が最終的に解雇されているという統計が示されていますが、これはPIPが不当であることを意味するわけではありません。むしろその逆です。雇用主には、従業員に対し業務基準を満たす責任を負わせる権利があり、PIPはそれを実現する最も公正な手段なのです。
ウォール・ストリート・ジャーナルの執筆者は、PIPが「主に雇用関連訴訟に対する法的防御策として利用されている」とも指摘しています。これは確かに事実です。雇用関連訴訟は全国的に頻発しており、多くの裁判官や陪審員は、雇用主が法を犯していないことだけでなく、従業員に対して適切な対応を取ったことを示すことも期待しています。解雇された従業員は、訴訟を起こした際に口頭での警告や指導がなされたことに異議を唱えることがよくあります。そして裁判所や陪審員はしばしば、「書面にないことは起こっていない」という格言に同意します。PIPは、解雇に先立ち従業員が公正な警告を受けたことを示す書面による証拠となるのです。
一方で、PIPは従業員の業務パフォーマンスの改善につながる可能性もあります。これにより、解雇によるリスクや混乱を回避できるだけでなく、後任者の採用や研修にかかる費用も節約できます。場合によっては、管理職が従業員に対して業務上の期待を十分に伝えられていないことがあり、PIPが従業員にとって初めて自分のパフォーマンスが不十分であることを示すものとなる場合もあります。
効果的なPIPを作成するための6つのステップ
効果的なPIPには、以下の6つの要素が含まれます。
- 従業員のパフォーマンスが期待に達していない具体的な事例の特定
「出勤率が悪い」や「営業成績が悪い」といった一般的な表現は役に立ちません。それよりも、具体的な例を挙げることが重要です。例えば、「11月24日、11月30日、12月2日及び12月3日に無断欠勤した」や、「9月、10月及び11月の売上目標を達成できなかった」、「過去10週間のうち8回、週次の営業報告書の提出が遅れた」といった具体例を示しましょう。 - 従業員のパフォーマンスをどのように改善すべきかに関する具体的な指示
例えば、「欠勤が必要な場合は、勤務開始の少なくとも2時間前までに上司に連絡すること」や、「営業見込み客のうち最低でもX%を成約に結び付けること」といった具体例を挙げることができます。また、望まれるパフォーマンスが数値化しにくい場合でも、「部下に対する発言において、今後は罵りや侮辱を一切使用しないこと」や、「必要な書類を全て準備した上で、取締役会に完全に準備を整えて臨むこと」といった具体的な要件を提示することができます。従業員に課す目標は、合理的かつ達成可能でなければならず、PIPに記載された問題点に即していなければなりません。他の改善項目を追加することは避けてください。
- パフォーマンスを改善するための合理的な期間
従業員には、改善を示すために30日又は60日間の期間を与えるべきです。30日未満では十分な時間とはいえず、90日を超える期間は通常、長すぎると考えられます。ただし、従業員がある程度の改善を示しているものの、まだ完全に期待に達していない場合や、PIP期間中に休暇を取る場合には、その期間を延長することができます。 - PIPを成功裏に完了できなかった場合の結果に関する通知
PIPが成功裏に完了しなかった場合の結果として解雇が予定されている場合、その旨を明記する必要があります。ただし、PIPの期間があらかじめ定められている場合であっても、管理側がPIPを早期に終了させる権利を留保することを文書に記載すべきです。また、PIPは雇用関係の「随意性」を変更するものではないことを明記する必要があります。この「随意性」に基づき、いずれの当事者も理由や事前通知なしに雇用関係をいつでも終了することができます。 - PIPを受領したことを確認する従業員の署名
従業員が署名を拒否した場合は、文書に「従業員が署名を拒否した」と記載し、管理職2名が署名する必要があります。従業員が署名を拒否しても、PIPの拘束力が弱まることはありません。同様に、従業員がPIPに異議を唱える文書を作成した場合は、それを受け取り、従業員の人事ファイルに保管するだけで構いません。従業員の抗議があったとしても、PIPは引き続き適用されます。 - 従業員の上司又は監督者との定期的な面談
PIP期間中のフィードバックは非常に重要です。これらの面談は事前にスケジュールを立て、面談後にその内容を従業員に書面で提供する必要があります。もし監督者が従業員のパフォーマンス管理に不慣れである場合は、人事部門の担当者が面談に同席するべきです。
最後に
PIPを受けている従業員が、労災補償請求を提出したり、医療休暇を申請したり、労働法や安全規則違反の訴えを申し立てることで解雇を阻止しようとした場合はどうするべきでしょうか?このような事態は実際に起こり得ます。
従業員が休暇に入った場合は、改善期間の進行を一時停止し、復職後に再開してください。他の請求や苦情がPIPプロセスに干渉することを許してはいけません。PIPが請求や苦情、又は休暇申請に先立って行われたことを示す書面があれば、報復を主張する請求は弱いものとなるでしょう。
結論
PIPが必要とされる状況では、雇用主はその利用をためらうべきではありません。PIPは、従業員に対して業績上の問題点を公正に通知し、改善の機会を与えるものであり、不当解雇請求に対する防衛策として非常に有用です。
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